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平成23年度 調査研究報告 学士課程における看護学専門分野別評価実施の仕組みづくりに関する調査研究

試行評価の実際

B第1次評価:書面調査

今回の試行評価の対象校は、公立の看護学科と私立の看護学部の2校とした。公立の看護学科は保健医療学部の1学科で他の学科として理学療法学科と作業療法学科から構成されている。私立の看護学部は、鍼灸学部からスタートしたことから、統合大学を目指す特徴を有する大学である。書面調査では、上述の対象校に、書類の作成と添付資料の送付を依頼した。対象校から提出された書類については、評価チームが一同に会して評価する体制とした。これによって書類や添付資料のコピーの費用や評価期間が大幅に軽減され、今後本格的な評価を限られた体制の中で行う上で有効な方法であることが明らかになった。さらに、委員同士でディスカッションしながら評価できるという利点も確認できた。また、提出された資料は、すぐに評価チームのメンバーにPDFファイルで送付し、会議の前に事前に対象校の自己評価の状況に目を通して参加できるよう配慮した。これらによって、評価チーム委員会の回数、時間が大幅に削減できた。

評価チーム委員会では、各基準に基づいて、対象校の自己評価が妥当であるか否かの視点から評価を行った。しかし、対象校の自己評価における妥当性の判断基準においては、公平性の点等から、今後はさらなる評価視点の詳細を示すマニュアルの必要性が指摘された。また、評価システムにおいては、対象校の自己評価と、評価委員メンバーによる評価とを、ブラインドで評価することの必要性も議論され、今後、更なる検討を重ねることが必要であると考えた。

C第2次評価:訪問調査

訪問調査では、書面調査では明らかにならなかった点についての質問を対象校に事前に送付し、訪問調査の際に対象校から回答を得るプロセスを踏んだ。事前に質問項目を送ることで、当日の訪問調査をスムーズに行うことができ本プロセスは有効であった。その他、授業聴講、在校生へのインタビュー、実習施設の見学、実習施設の実習担当者へのインタビュー等を依頼した。なお、特に、学生へのインタビューや実習施設の見学、実習指導者へのインタビューを訪問調査項目に含むことは、看護学教育プロセス、教育効果を評価するために極めて重要であることが示唆された。

Dプロジェクト委員会・総合評価評議会

プロジェクト委員会は、今回は時間の関係から、両大学とも1月下旬に、まる1日かけて(午前と午後の約7時間)集中的に実施した。まず、訪問調査終了後、評価チームのメンバー各自が分担した項目の評価結果をまとめた。次に、各メンバーがまとめた評価結果を、各評価チームの他のメンバーとメール会議で検討し、10基準に基づき評価報告書原案を作成した。作成された評価報告書原案はプロジェクト委員会で審議され、他の評価チームの結果との妥当性を比較された。

作成された10基準に関する評価結果報告原案は、その後、対象校に送付され、10基準項目の評価に対する意見を求める方法で異議申し立ての期間を1週間設けた。なお、今回対象校からは文章表現など、いくつかの指摘があったため、指摘を参考に最終的な文言の修正を行い、総合評価評議会に提出する評価報告書原案を作成した。なお、各報告書原案には、プロジェクト委員会委員長による総合評価案も盛り込まれた。

総合評価評議会では、最終的な総合評価も含まれた評価報告書原案の妥当性が審議され、最終評価が決定された。

E報告会の開催

看護系大学協議会による本格的な看護学専門分野別評価の実施に向けては、会員校への看護学専門分野別評価の必要性の更なる強化、評価を受けることのメリット等を広く浸透させていくことが必要である。そのため、今回の報告会は評価チームのメンバーからの発表だけでなく、対象校からの発表も取り入れた。今回の試行評価を通して、対象校からは、教育課程を見直すよい機会になった点、評価結果を上層部への改善要望の裏付けとして示すことができる点などのメリットが報告された。

以上から、看護学専門分野別評価を受けることで、教員のよりよい教育環境の改善への意欲が高まることにも繋がることが明らかになった。また、今回の評価報告における一連のプロセスを介し、評価者側のトレーニングおよび評価者用マニュアルの必要性など、いくつかの課題が指摘された。

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