202003

学内チャペルでケン神父様と

天使大学看護栄養学部看護学科 母性看護学
中田 かおり

東京都内の産婦人科病棟で看護師・助産師として勤務後、シドニー大学看護学部卒業、ペンシルベニア大学看護学修士課程周産期高度専門看護師プログラム修了(看護学修士)、聖路加看護大学(現・聖路加国際大学)博士後期課程修了(博士(看護学))。2003年より大学教育(母性看護学・助産学)に携わり、2018年4月より現職。

私にとって、大学で看護を学ぶということ、とは

 私は助産師として働き始めた頃、自分が将来、教員として大学に身を置くことになろうとは、夢にも思っていませんでした。看護師になろうと思ったのも、高校3年生の冬も間近、スポーツ推薦で入学した高校で卒業後の進路を考えていたときでした。「自立した社会人になりたい」、「人の役に立つような仕事に就きたい」と思いついたのが、看護師でした。「助産師」のことは、母性看護学実習のときに初めて知りました。実習で担当をさせていただいたご家族、病棟での医師や助産師の姿に感動し、卒業後は是非産科で働きたいと思い、助産師になりました。
 助産師として働き始めた後に進学しようと思ったのは、臨床でさまざまな事例と関わる中で、自身の専門職としての力不足を痛感したからです。助産師として、もっと自律した仕事ができるようになりたい、と思いました。そこでオーストラリアに留学し、看護を学問として体系的に学ぶおもしろさを経験しました。そのときに、「看護学」と「助産学」の違いを意識するようになり、自分の専門領域の学修を深めるべく、大学院に進学しました。
 当時の私は、オーストラリアやアメリカで出会った看護師・助産師と、自分がそれまでに経験した日本の看護師・助産師との違いに圧倒されていました。大学での教育を志すようになったのは、自分がそのときに学んだことをたくさんの人たちと共有できたら、と思ったからです。ところが大学には、既存の知識や技術を教えるだけではなく、自らが新たな知見や技術を創出したり、専門分野における現象を分析し、活動を評価して社会に発信したり、という役割があります。自分がその役割を担うためには、「研究」という能力が必要でした。自身の年齢や経済的なことなどを考えてかなり悩みましたが、周囲の支援・協力のおかげで、博士課程に進学し、修了することができました。
 勉強をすればするほど、「看護」という学問と職能の奥深さを感じます。自分が期待していた世界とは別に、それまで思ってもみなかった世界も目の前に広がります。看護師として働く場所、働き方、看護師としてあるいは看護師になるために学んだことを社会で活かす方法は多様で、まだまだこれから開拓される道もあるでしょう。実際に看護師の資格を持って、政治家、芸術家、文筆業、起業家、マスコミ業界、航空業界など、医療という枠に留まらず活躍する人はたくさんいます。大学で看護を学ぶということは、看護師になって看護の専門性を極めることだけではない、人生の糧となる教養と人への理解を、とくに健康という側面から深めることでもあると思っています。
 看護系教育のカリキュラムが過密なのは、日本に限ったことではないようです。私が現在勤務している天使大学には、カトリックの司祭(アメリカのナースでもある)が在籍し、大学生活の節目ごとに祝別式などを司式します。その際神父様は、参列者のために毎回必ず、製本した式次第と美しくラッピングした小さなプレゼントを用意されます。このような機会は、常に相手をおもい、心を込めて自分の行いを行う、という姿勢を、折に触れて私たちに思い起こさせてくれます。その幸せに感謝しながら、今は、大学で看護を教えるということ、について想いを巡らしています。

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