202009

愛知県立大学看護学部看護管理学
森田 恵美子

名古屋大学附属助産婦学校卒業後、公立陶生病院に就職。看護師長・看護管理部長として勤務。愛知県立看護大学大学院看護学研究科看護管理学を修了する。その後、公立瀬戸旭看護専門学校副校長を経て、現職。

看護管理学におけるオンライン実習の試み
~実習施設と学生をつなぐ~

  学部教育においては、教育目標に基づき、看護学の専門的知識と技術の修得と、豊かな人間性を備えた人材の育成を目指し、さらに、「考えて実践・行動できる」「判断できる」「創造できる」などの能力を備えた資質の高い看護専門職業人の育成に力を入れています。そこで、あらゆる場面・状況に対応できる高度な看護実践能力を養うため、1年次から数多くの実習に取り組めるようカリキュラムを編成しています。高学年次になると外部提携先である病院や保健所、介護保険施設、保育園などで実際の看護師、保健師や助産師とともに現場での看護を学び「実践力が身につく実習」をしています。
 しかしながら、2020年度は、新型コロナウイルス感染症に伴い実習施設での実習受け入れ困難が生じ、予定していた実習病院で卒業年次の学生の5月からの実習ができない状況となりました。私は、看護管理学の領域で授業を担当し、卒業年次の学生の看護管理学実習も担当しています。年度初めより新型コロナウイルス感染症の影響による実習施設の受け入れの中止により、実習施設の変更が急遽必要となり大変難渋を致しました。そのような時、看護管理学領域の教員で何度も検討を行い、実習場所の確保と実習形態の変更を行い予定通り実習を行うことができました。このような経験をふまえご紹介いたします。
  看護管理学実習では、実習目的を「看護部組織におけるキャリア開発の実際と,看護管理学概論・看護管理方法論で学習した内容を関連づけて理解し,看護専門職のキャリア開発における自己の課題を見いだすことができる.」として、実際に病院の看護部組織をマネジメントしていらっしゃる看護部長さんより臨床講義を受け、各部署の看護師長さんが直接指導者として指導を受ける看護管理を中心とした実習を行っています。
 今回、新型コロナウイルス感染症に伴い学生が昨年までと同様の実習形態では困難と考え、実習施設と自宅にいる学生をオンラインでつなぎ実習を進めました。実習施設の看護部長さんや各部署の看護師長さん看護スタッフの皆さんのご協力のもと、実習目的・目標を達成することができ実習を終了できました。
 実習開始前は、教員の私共もオンラインでの実習が円滑に進められるのか不安がありました。しかし、実習施設の看護部長さんをはじめとする看護管理者の皆さんがWi- Fi環境の設定や部署からオンライン発信ができる研修室の確保等、実習環境を整えていただいたおかげで無事に88名の学生の実習を終えることができました。担当しました看護管理学領域の教員も、詳細に学生への実習オリエンテーションを行いました。そして、実習施設の指導者である看護師長さんと学生をつなぐこと、日々の学生指導をオンラインで行うこと、中には一部電波の障害なども起こり随分と大変な状況もありましたが、昨年度と同様の成果が得られました。
 学生も、看護師長さん看護スタッフの皆さんのインタビューより、実習病院における看護専門職のキャリア開発の仕組みや、日常の看護実践のなかで行われているキャリア開発の具体的な内容を学ぶことができ、実際の取り組みについても学びを深めることができました。また「キャリア開発のあり方について,授業で学習した内容と関連づけて,自己の将来を見据えた課題を見いだすことができた」と述べた学生もいました。中にはオンライン実習を行うことで安心して実習を受けることができたと述べていた学生もいました。通常の臨地実習とは違うオンライン実習ではありましたが、教員が学生指導をすることについては、ツールは違っていても伝えるべきこと指導すべきことは変わりなく実施できたと思っています。
 私は、看護教育においてどのような状況の中でも周りとの検討・調整を行い、常に最善のことができるように努めたいと考えています。今回の新型コロナウイルス感染症の影響は、とても想定できるものではありませんでしたが、看護管理学領域の教員のチーム力で、できる限りの教育体制の整備をすることができました。そのことは、学生への教育の質の担保であると思っています。今後も、今回の経験を活かし、授業や実習に前向きに取り組みたいと思います。

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