202302

2022年度の卒業研究を担当した学生さんと
田上美千佳先生と一緒に

千葉大学大学院看護学研究院 地域創成看護学講座
鈴木 美央

大学卒業後、国立国際医療研究センター国府台病院にて勤務。その後大学院に進学して修士課程を修了し、臨床に戻って精神看護専門看護師を取得した。その後に博士課程を修了した。2021年から現職に就き、精神看護実習の指導や、精神疾患をもつ方の看護についての研究に取り組んでいる。

相手の心に寄り添う看護

 私が看護師になりたいと思ったきっかけは、精神科病院で看護師をしていた母がとても楽しそうに仕事をしていた姿を見たことです。大変だと言いながらも、話しているときの顔は笑顔だったことを覚えています。精神科看護により具体的に興味を持ったのは、大学時代の精神看護実習のときでした。高齢のうつ病の患者さんを受け持たせていただきました。高齢であったため認知機能のアセスメントをしたかったのですが、HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)などの検査結果を見ても、その意味がよくわかりませんでした。そんなときに指導教員の先生が、患者さんや他の学生とも一緒にトランプで神経衰弱や七並べなどのゲームをしてみるなかで、どこまでできてどこからできないのかについてアセスメントしてみることができると教えてくださいました。入院中の生活の様子や関わりに加え、ゲームなどの余暇活動からも患者さんの理解力や判断力をアセスメントすることができるという学びは、目からウロコでした。
 就職し、たくさんの患者さんと出会い、患者さんの思いを理解することの難しさを感じました。患者さんが何を伝えようとしているのか、患者さんの言葉や行動の背景にはどんな気持ちがあるのか、精神症状に加え、成育歴や生活背景を踏まえて理解しようとするものの、うまくいかないこともたくさんありました。大学院に進学し、大学時代の恩師に指導を受けながら、認知機能や相手の心を理解するための機能(社会認知機能)やコミュニケーションスキルについての研究を行いました。その研究を通して、なぜ患者さんの気持ちがうまく理解できなかったのかということについて、たくさんの発見がありました。患者さんの認知機能をアセスメントすることで、患者さんとコミュニケーションがうまくいかない原因や、コミュニケーションを円滑にするための工夫についての理解が深まったように思います。研究を通して、実践をよりよくしていくことができるという体験はとても楽しく、より精神看護の実践や研究への興味が深まりました。患者さんの気持ちを理解するためには、身体的・心理的・社会的側面から全人的に理解することが重要です。特に身体的側面における認知機能にはとても興味があり、現在も研究に取り組んでいます。
 現職についてからは、精神看護実習での学生指導を通して患者さんと関わることが多くなりました。学生からは、「精神看護はコミュニケーションばかりで、看護として何をやったかわからない」と言われることがあります。でも、そのコミュニケーションの中で患者さんのアセスメントをして思いを理解し、そして患者さんの意識や行動が変化していくことの面白さが伝えていけたらいいなと思い、実習指導をしています。私のように実習体験がきっかけになって、「精神科の看護師になりたい」と希望してくれる学生もいて、精神看護の仲間が増えることがとても嬉しく思っています。多くの学生が相手の思いに寄り添える看護師になれるようサポートし、私も一緒に成長していきたいと思います。

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