202304

大分大学医学部基盤看護学講座基礎看護学領域
野上 龍太郎

九州看護福祉大学卒業後、大分医科大学大学院医学系研究科修士課程(看護学)に進学。修了後、大分大学医学部附属病院で看護師として勤務。2021年に大分大学大学院医学系研究科博士課程(医学)を修了し、同年より現職。

言語化の難しさ、学生とともに学ぶ教育

 この度は、このような貴重な機会を与えて頂き、誠にありがとうございます。
 私は、一昨年度まで臨床で看護師として勤務していました。看護師として勤務していた時は、患者さんの目標達成に向け患者さんと共にケアを実践し、自分の行った看護が患者さんの目標達成に貢献できた時や、目標達成を喜ばれる患者さんの姿を目にした時は、私にとってのやりがいにもつながり、また喜びでもありました。また一方で、臨床現場で後輩看護師や実習生に指導、教育した際に、後輩看護師や実習生の疑問が解決できた時やこれまで学んできたことが臨床での看護実践に結び付き、身に付けた知識や技術が患者さんへの直接的な支援につながった時の充実感に満ちた姿は、患者さんのそれと同様に、私にとってのやりがいや喜びでもありました。このことは、私が教育の道に進みたいと思うようになったきっかけの一つでもありました。
 昨年度から大学教育に従事するようになり、先に述べたような経験ができることを私は楽しみにしていました。しかし、これまで臨床現場で行ってきた指導、教育と教育現場での指導、教育には大きな違いがありました。その一つが、教育現場では学んだ知識や技術を実際に患者さんに提供する機会や自分の行った看護に対する患者さんからの反応を確認する機会が、実習などに限られていることです。臨床現場では、学んだ知識や技術の看護実践への活用を直に経験することができました。また、私が共に実践することで、知識や技術が患者さんへの支援として活かされていることを示すこともできました。しかし教育現場では、そのような機会が限られているため、言葉で伝えることが中心となります。これまでも、自分なりに後輩看護師や実習生に自分の考えを言語化し、伝えてきたつもりでした。しかし大学教育に従事するようになり、これまでの自分の指導や教育が言葉ではなく、実践を示すことで補っていたことを思い知らされるとともに、自分の考えや判断プロセスを言語化し、他者に適確に伝えることの難しさを実感しました。学生には、今学んでいることがこの先どのように活用され、実となるかを、これまでの私自身の臨床経験を活かし、大学での学びと臨床経験を結びつけることで伝えていきたいと思っています。学生が疑問を解決し、学ぶことの楽しさや喜びを実感することができるよう、学生と共に自分自身も日々研鑽を重ねていきたいと思います。

back

掲載の先生の
所属大学に関する情報はこちら

TOPへ戻る