看護師免許を取得後、関西医科大学附属病院(現関西医科大学総合医療センター)で看護師として勤務。2006年糖尿病看護認定看護師資格を取得。2015年京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻修士課程修了(人間健康科学)後に復職。2018年より現職。2019年より、関西医科大学附属病院看護部に兼務し、外来で看護実践を継続している。
看護系の大学を志す理由や、卒業後にどのような仕事に就くかは、人それぞれだと思います。私が看護師になることを決めたきっかけは、「身体のことを知っていると、生きていく上で何か役に立ちそうだな」「看護師は就職先がたくさんありそうだな」という、いわば“人生に保険をかける”そんな気持ちからでした。今振り返れば、当時の私は自分のことばかりを考えていたように思います。私は、大学病院に就職し、最初に配属されたのは、外科系の急性期病棟でした。手術を終えて退院されても、糖尿病を併せもつ患者さんは、ずっと糖尿病とともに生きていくのかと考えたことがありました。糖尿病の合併症で心臓の手術をしたり、足の血管の手術をしたり、それらは根治的な治療にはなりません。糖尿病の治療を継続することが、再発や進行を防ぐ鍵になります。そこで私は、糖尿病のある患者さんともっと深く関わりたいと考え、糖尿病看護認定看護師の資格を取得しました。
認定看護師には、「実践」「指導」「相談」という3つの役割があります。その「実践」の中で気になったのが、治療を中断される方が多く、合併症が重症化してから受診されるケースが目立つことでした。糖尿病は、自覚症状があまり現れないタイプがあり、気づかぬうちに合併症が進むことがあります。仕事や家庭での社会的役割を担いながら、治療を辞めずに続けていくことの難しさを想像するたびに、強い問題意識を持つようになりました。その後、私は、大学院修士課程に進み、糖尿病患者さんの治療中断予防に関する研究を行い、看護支援につながるように今も研究を続けています。患者さんも、私たち医療者も、同じ社会の中で生きる人間として、尊厳をもち、日々の生活を送っています。近年、「糖尿病」という言葉は、正しく病態を表していないことから、病名や糖尿病に関する言葉が見直されています。糖尿病に対する社会的な偏見や誤った情報や知識によって、糖尿病のある人が不利益を被ることがないように、私たち看護師も常に知識や情報のアップデートが必要です。大学では、3年生の前期に、慢性疾患のある患者さんとの看護面談の場面をシミュレーションする演習を行っています。患者さんを「社会で生活する一人の人」として捉え、生活の中に治療を取り入れていくための関わり方をグループで考えます。その後、看護師役の学生が患者役と面談をします。面談の中では、患者さんを気づかう声かけが多く聞かれ、学生が患者さんと真摯に向き合う姿勢に感動します。このシミュレーションの体験が、後期の実習の場で実際の患者さんと関わるときに役立つことを願いながら続けています。
私は大学教員をしながら、兼務で附属病院看護部の看護師として仕事を続けています。病院では、受診患者さんと関わる他、糖尿病や腎臓病の医療チームメンバーとして活動しています。患者さんの中には、20年近く通われている方もおられます。私が最初にその女性患者さんと出会った頃、独身でしたが、その後、結婚されて、妊娠、出産を経て、今は母親として忙しい日々を送りながら通院を継続されています。「新婚旅行中の血糖コントロールや、授乳中の低血糖対策のことを一緒に考えていたことが懐かしいですね」と、一緒に昔話をして、患者さんとともに歳を重ねることができるのは、糖尿病看護の魅力の1つでもあります。その他にも、関西医科大学の小児科の医師と看護師は、小児糖尿病サマーキャンプに関わっています。私も20年近く関わっており、毎年楽しみにしています。子どもたちは、会うたびに背が伸びて、小学生だった子どもたちも、今では社会人です。OBやOGとしてキャンプに参加している方もいます。子どもたちにとって、キャンプはとても大切な場所で、戻って来られる居場所だと感じますし、私も一緒に大事にしたい場と思って参加しています。看護学部の学生は、ボランティアとして参加する機会もありますので、是非一緒に参加できると嬉しいです。
看護の道に進む学生の皆さんが抱いた夢や希望を一緒に大事にして、応援し続けたいと思っています。