薬局薬剤師さんと健康イベントを共同開催。健康相談ブースにいるところ。
札幌医科大学保健医療学部看護学科卒業。同大学附属病院手術室や病棟で看護師として勤務しながら、同大学大学院保健医療学研究科看護学専攻にて博士課程前期修了。配偶者の転勤に伴い、福島県で訪問看護師として就職するも事業所が閉鎖。2017年9月福島県立医科大学看護学部療養支援看護学部門(現:成人・老年看護学部門)老年看護学領域に着任し、現在に至る。2026年から福井県立大学大学院健康生活科学研究科博士後期課程に進学。
看護師の資格が取れるのであれば、どこで勉強しても構わないと思っていましたが、運良く大学の看護学科に進学することができ、現在も、看護という学問を意識しながら働き続けることができています。
大学生の時は、何度も看護を大学で学ぶ意義は何なのかという問いに直面しました。入学前まで、私の看護のイメージは、小さいころに読んだナイチンゲールの伝記や、病院にいる看護婦さん(2002年に名称が男女問わず看護師に統一された)と漠然としており、学問としての看護学を意識したことはありませんでした。大学での講義や、病院や訪問看護ステーション等での臨地実習を通して、看護師が専門職であること、その役割の重要性、看護は人が健康であるために欠かせないものであることを強く感じました。そして、患者さんが自宅で疾病を持ちながらも安心して生活できるように援助する在宅看護分野に興味を持ち、そのような援助ができる看護師になることを目指してきました。
超高齢社会に直面する日本において、治療や療養に関係する様々な施策や制度は、治療を中心とした病院完結型から、生活の場で支える地域完結型へとシフトし、看護師の役割も多様化しています。しかしながら、多くの看護師は病院や診療所で働いており、それ以外の場所で、住民の方が看護師に出会う場所は限られています。私は、病気をもって生活することに不安のある方、健康に不安のある方、さらに、自分のことだけではなく家族の健康や介護について相談したい方が、気軽に看護師に相談できる環境があれば、人はより良く生活できると考えています。訪問看護ステーション、地域包括支援センター、保健センター等には保健師や助産師もおりますが、どちらにしても、体調に不調を感じたり、病気になったとき以外に看護師と関わる機会は、現在の日本においては多くありません。日常生活の中で看護が受けられる環境を整えるためには、看護師が病院の中だけにいるのではなく、地域で生活している住民の近くに行くことが必要と考えました。でも、どうすれば看護師が住民のそばに行くことができるのか、大学院の修士課程を修了した後も、この問いも持ち続けていました。
そして、福島県に引っ越し、訪問看護師を経て大学への着任が決まったころ、ふいに地域にある薬局で、看護師が働かせてもらったらよいのではないか!とひらめきました。薬局は住民の身近にある医療の拠点であり、看護師が薬剤師と共に活動できれば、より質の高い医療を提供することができ、住民の健康にも寄与できるのではないかと考えました。そこで、2017年から所属大学で「ファーマシー・ナース(薬局で活動する看護職)」という新しい役割についての研究を開始しました。研究を進める中で、薬局の利用者からは、看護師に気軽に相談できることを期待する反応が得られる一方、看護師は病気になったらお世話になる人であり、法律で定められた「療養上の世話」と「診療の補助業務」以外の看護の役割については、まだ十分に認識されていないことが推測されました。
私は、看護という学問を学んだ看護師に限らず、全ての人々が看護とは何かを学べば、より健康に生きられると考えています。そのためにも、博士後期課程では、医療人類学の視点とその方法論を学び、健康課題や生活課題に対処してきた住民の経験や住民にとっての看護や看護ニーズを明らかにすることを目的に、健康や生活について包括的に探究する予定です。自分が看護師に向いていると思ったことはなく、理想とする看護師像にはほど遠いですが、自立した研究者となり、看護学という学問の発展にほんの少しでも貢献したいと思っています。そして、地域住民の健康に貢献することはもちろん、薬局薬剤師と看護師の連携を推進するためにも、看護の実践者として「ファーマシー・ナース」活動を続けていきたいと考えています。