202609

大学・大学院時代の先輩で、現在は本学公衆衛生看護学領域でともに働く先生と。右が本人です。

植草学園大学 看護学部 公衆衛生看護学領域
井口 紗織

千葉大学看護学部看護学科を卒業後、東京都大田区で保健師として地域保健活動や健康危機管理業務に従事。千葉大学大学院看護学研究科博士前期課程修了後、東京工科大学医療保健学部看護学科にて勤務。千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程を修了したのち、千葉大学運営基盤機構ダイバーシティ推進部門を経て、2025年より現職。専門は、公衆衛生看護学、災害看護学。保健師の人材育成などをテーマに研究をしている。

地域と、学生と、ともに看護をつくる

●地域で暮らす人を支える看護との出会い
 私が看護学部卒業後に保健師の道を選んだのは、病院にかかっていない人も含めて、人々の健康や暮らしを支える看護に魅力を感じたからです。病気がなくても、健康に、自分らしく、生き生きと暮らすことは決して簡単なことではないのではないか。そんな思いが、地域で予防活動や健康支援を行う保健師への関心につながりました。
 保健師として勤務していた際には、母子保健や精神保健といった地域保健活動のほか、大規模な感染症対応などの健康危機管理にも携わりました。長期にわたる厳しい対応が続く中、私自身も心身ともに疲弊した経験があり、「住民を支える看護職自身をどう支えるか」という問いを持ったことが、現在も継続している研究テーマにつながっています。

●「支える人を支える」という研究
 私は、災害発生時に被災地の最前線で中長期にわたって住民に直接的な健康支援を継続する市町村の保健師に着目してきました。保健師は、自身も被災者でありながら、住民の安否確認や避難所での健康支援、復旧・復興に向けた地域づくりへの支援など、多くの役割を担います。こうした保健師の災害時保健活動の振り返りを、「外傷後成長(Posttraumatic Growth)」という概念を活用して支援する方法を研究しています。
 外傷後成長とは、大きな困難を経験した人が、その経験を振り返り、意味を見いだしていく中で、新たな成長や変化を経験することです。災害という厳しくつらい経験を「成長につながった」と簡単に捉えることが目的ではありません。保健師の皆さんが、何を経験し、何を感じ、何を学んだのかを丁寧に振り返り、その経験をその後の実践やキャリアにどうつなげていくのかを考える。その過程を支援することで、メンタルヘルス支援にとどまらず、専門職としての成長やキャリア形成にもつなげていきたいと考えています。

●地域に出て、暮らしから看護を学ぶ
 私が所属する植草学園大学看護学部は、2025年4月に開設された新しい学部です。学生の声を聞きながら、教員も試行錯誤し、これからの看護教育をともにつくっていけることに魅力を感じています。学生との距離の近さを生かし、1年次からの国家試験対策や個別指導にも力を入れています。
 公衆衛生看護学では、病気や健康問題だけでなく、その人がどのような暮らしをしているのかという視点から、個人・家族・地域の健康を考えることを大切にし、保健師実習では房総エリアの自治体に学生が赴き、宿泊しながら地域で実習を行う機会も設けます。災害看護学では、避難所運営ゲームや事例を通して、災害時の倫理や支援者支援についても考えます。保健師としての経験や研究知見を伝えながら、教科書の知識を実際の社会課題と結びつけ、自分なりに考えることができる授業を目指しています。
 また、本学の「地域共創ケアセンター」の活動では、地域の体操教室を運営する高齢者ボランティアリーダーの活動を支援し、地域の方々と介護予防を考えるワークショップなどを企画しています。学生も活動に参加し、学生、教員、地域の方々が一緒に地域のケアを考え、つくっていくことを大切にしています。

●ともにつくる看護
 看護は、病気を治すことだけを支える仕事ではありません。その人がどこで、どのように暮らし、どんな人生を歩んでいくのかを、ともに考える仕事でもあります。そして、人々を支援する看護職自身も、誰かに支えられながら成長していくのだと思います。
 地域の人々と出会い、暮らしを知り、学生、教員、地域の皆さんとともに、新しいケアとこれからの看護をつくっていきたいと思っています。人々の暮らしや地域に関心がある人、さまざまな人とともに看護を考えてみたい人に、ぜひ植草学園大学での学びを知っていただけたらと思います。

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