2011/11/30
看護師特定能力認証制度については、これまで「業務独占ではない」「名称独占ではない」ことを前提として、第三者機関による試験を行い、特定能力認証を行なうことが提案されてきました。11月18日「第9回チーム医療推進会議」では、永井座長提案で「国家資格」についての検討が開始されましたが、国家資格については当日の資料には記載されていない論点でした。
■資料参照
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001w5xo.html
資料2~3、参考資料1~3をご覧ください。
代表理事として野嶋は、国家資格のまえに、何の能力認証であるかを問題にしましたが、永井座長は「すでに看護師としての資格は持っているので、能力認証は特定行為の部分のみでよい」との意見でした。特定看護師(仮称)は高度な看護業務を実施するのであり、特定行為のみの能力認証については問題であると指摘はしましたが、現状では、特定行為と看護とを分断し、特定行為に焦点化されての国家資格となることが危惧されます。
今回の認証制度骨子案では、医師の包括指示の下で看護師が特定行為を実施できるために認証が行われるとのことでした。特定行為の全体像、業務範囲はいまだ不明確な上、具体的指示などの一定の条件下では特定行為を一般の看護師も行えることから、「免許」としての国家資格ではないと考えられますが、この点はチーム医療推進会議の中で不明確なままに議論が進んでしまいました。一般的に、「国家資格」には、ある特定のことを行えるよう一定の条件を満たした人に認める「免許」と、ある事柄を行うのに必要とされる「知識・技術の認証」の意味を持つものとがあります。座長が議論を投げかけた「国家資格」が、この後者であるという確認がなかったのです。
仮に、「免許」としての国家資格とするのであれば、少なくとも以下の条件が揃うことが必要であり、現時点では時期尚早であると考えます。慎重に検討すべき点を3点上げました。次回のチーム医療推進会議は12月7日に予定されています。それまでには本会の考えをまとめておく必要があると思いますので、会員校の皆様には、ご意見をいただければ幸いです。
①認証する能力の規定
国家資格のために必要な能力認証試験は、看護学の各専門領域を中核として、特定行為を内包する高度な看護実践能力を認証するものでなければならない。しかし、現行案ではどのような能力の認証かは、いまだ論じられていない。特定行為のみを認証して国家資格化することは、看護の自律性や独自性を脅かすものである。高度な看護の国家資格のために認証する能力とは、特定行為を内包する高度な看護実践能力であることを明示することが必要である。
②専門看護師教育や専門看護師の資格との整合性
国家資格とする場合には、先行する高度な看護を実践している専門看護師の制度を基盤として、これらと整合性を保つことが必要である。そのための措置を講じることなく、国家資格の制度を創設することは反対である。
③教育の一本化
免許としての国家資格とするには、教育の一本化が不可欠である。しかし、現行案では2年と8ヵ月という教育課程が提示されている。教育課程が異なるのに同一の国家資格ということはあり得ず、少なくとも2種類の新たに国家資格が創設されることになる。看護師、准看護師に加え、2種類の能力認証が加わるとすれば、医療の受け手である国民には極めてわかりにくく、医療現場の混乱も危惧され、人々も看護職も望むことではない。
2011年12月1日
一般社団法人日本看護系大学協議会
代表理事 野嶋佐由美
高等行政対策委員会 委員長 片田範子
専門看護師教育課程認定委員会 委員長 田中美恵子
高度実践看護師制度推進委員会 委員長 田村やよひ