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代表理事挨拶

 1975年に始まった日本看護系大学協議会(JANPU)は、2025年で創立50周年を迎えます。わずか6大学の教員有志から始まった本会が、300課程を超える会員校を有する会になることを誰が想像したでしょうか。
 我が国の看護系大学は、現在291大学で入学定員は約27,000名となり、修士課程は213大学で入学定員は約3,300名、博士課程は139大学で入学定員は約800名となりました。本年10月には、日本看護系大学協議会創立50周年記念式典を催す予定です。

 本協議会は、看護学高等教育機関相互の連携と協力によって、看護学教育の充実・発展及び学術研究の水準の向上を図り、もって人々の健康と福祉へ貢献することを目的としています。この目的に賛同した看護系大学が社員となって、選挙と指名によって選出された役員が理事会を構成して、事業を展開しています。
 事業として、(1)看護学教育に関する調査研究 (2)看護学教育の質保証・向上 (3)高度実践看護師教育課程の推進 (4)看護学教育に関する政策提言 (5)看護学の社会への啓発活動 (6)看護学関連諸団体並びに国内外の諸機関との相互連携及び協力 (7)その他本法人の目的を達成するために必要な事業、を定款に掲げています。

 看護学士課程の2025年の最大の挑戦は、看護学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂に伴う、これまでのコンテンツ(教育内容)基盤型教育から、卒業までに学生が身につけるコンピテンシー(資質・能力)基盤型教育への転換をめざすことです。改訂のきっかけは2022年に岸田文雄首相(当時)の私的諮問機関である教育未来創造会議が発出した第一次提言にあります。これをもとに、2040年に向けて看護学教育に求められる人材像を「時代の変化に対応して自ら課題を設定し、論理的思考力、グローバルなコミュニケーション等によって、新たな価値やビジョンを創造し、積極的に社会を改善していく資質・能力を有する人材」と定めました。コロナ禍を経て、Z世代、それに続くα世代の学生の性質も変化しています。失敗したくない・傷つきやすい学生の特性に合う教授方法の開拓も必要です。同時にAIと共に学習する時代が訪れており、AIの嘘を見抜きAIを過信せずに、人間本来の知恵と工夫で新たな世界を創っていきたいと考えます。
 看護系大学院で学ぶ大学院生の数は年間約7,000名と近年は横ばいになっていますが、社会人の割合が多い特徴を持ちます。なかでも医療機関や保健所等に勤務しながら、あるいは大学で教鞭をとりながら学ぶ大学院生が多くなっています。看護師・保健師・助産師は免許更新制度のない国家資格であるため、自ら必要に応じて生涯学ぶ姿勢を持つ勤勉な集団であることが求められます。このためにはリカレント教育あるいはリスキリングが必要です。臨床実践を積み重ねていくと「outputの連続に疲れる」「inputが枯渇する」という時期があります。その時、大学院に学びを求めます。特に看護学は実践科学であるため、研究者を育成するカリキュラムだけでなく、高度実践家・管理者育成のカリキュラムが必要になります。人生100年時代にいきいきと仕事を続けられるような仕組みや環境、教育的試みを盛んにすることが望まれると考えます。

 また、本年2月21日に中央教育審議会より「我が国の「知の総和」向上の未来像~高等教育システムの再構築~(答申)」が発出され、新たな認証評価制度に移行することが公表されました。従来の大学を対象とした機関別評価から、学部・研究科などを対象にした分野別評価制度に大きく変化することになります。
 本協議会は、社会の変化に対応して、看護学へのニーズを捉え、事業を展開いたします。重点事業を3項目掲げ、これらを達成するための年度計画を示してきました。2025年度は以下の重点事業計画を掲げ、取り組んで参ります。

2025年度重点事業計画

重点事業1.今後の看護学教育のありかたを構想し、具体的な発展の道筋を構築する

  • 1)新たな認証評価制度について情報収集を行い会員校への情報提供と共有を行う
  • 2)看護学教育モデル・コア・カリキュラム改訂(コンピテンシー基盤型教育)の普及・啓発活動
  • 3)看護学教育モデル・コア・カリキュラム改訂を反映した実習ガイドラインを作成する
  • 4)実習前CBTシステムの日本看護系大学協議会版(仮称)開発をめざし、看護実践能力評価基準の確定およびCBT問題作成システム開発と実用化を進める
  • 5)「感染症等に強い人材育成」に向けたe-learning教育プログラム(学士課程・大学院/リカレント教育)の開発および実用の促進

重点事業2.高度実践看護のありかたを構想し、具体的な発展の道筋を構築する

  • 1)他機関と協働して方針案に基づき、APNグランドデザインを策定し、APN教育制度改革を進める
  • 2)他機関との協働のもとでナース・プラクティショナー(仮称)の資格制度化が実現するよう積極的に活動する
  • 3)高度実践看護師教育課程(CNS/NP)共通科目e-learning教材制作の検討を開始する

重点事業3.効果的な協議会活動を実現する組織運営および関連団体との協働を行う

  • 1)日本看護協会、日本私立看護系大学協会と協働するとともに、文部科学省や厚生労働省等に要望書を提出する
  • 2)定款・規程等を確認し、より効率的・効果的で公平性・透明性の高い組織運営に資するよう適宜改訂する
  • 3)災害時のJANPUネットワークの体制と機能を発展させる

一般社団法人日本看護系大学協議会
代表理事 堀内 成子

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