202006

CNS実習中の大学院生とICUの医師・看護師の皆様と。右から4番目の方が益田先生です。

名古屋市立大学大学院 看護学研究科 クリティカルケア看護学
益田 美津美

熊本大学卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院で看護師として勤務。その後、東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科先端侵襲緩和ケア看護学分野修了(看護学博士)。北里大学看護学部などを経て現職。

災難の中でも学生の主体的な学びを引き出す方策を考える

 今回、このようなコラムを書く機会をいただきましたので、これまで取り組んできた研究、教育活動を紹介しつつ、このコロナ禍に思う所感を述べたいと思います。
 私のここ最近の研究活動の中心は、シミュレーション教育に関するものです。対象は脳神経外科やICUの看護師、看護学生など様々ですが、シミュレーション教育プログラムの開発と評価が主なテーマです。日本の教育は長らく知識偏重型教育が続き、時には受動的な学習とも揶揄されます。そのような中、アクティブ・ラーニングへの関心も相まって、私にはこのシミュレーション教育がとても魅力的に見えました。そして、研究を積み重ねていくことで、シミュレーション教育は、リアルな臨床現場を体験できる実践的で効果的な学習方法であることを実感するようになりました。シミュレーション教育は、経験学習理論、インストラクショナル・デザインなど複数の理論を土台としていますが、この理論的基盤と教材設計のノウハウは、私の教育活動にも役立っています。特に、このコロナ禍で大いに役立ったのがバーチャル・シミュレーションでした。本学では、学部4年生の実習でICUの重症患者を受け持ち苦痛緩和に焦点を当てた実習と、タナーの臨床判断モデル1)を用いた看護師の思考プロセスの理解に焦点を当てた救急外来初療室での「気づきのトレーニング」を行っています。「気づきのトレーニング」では救急搬送された患者の対応を見学した後、看護師と思考プロセスについてディスカッションし、臨床判断の学びを深めていきます。しかし今年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により病院での実習が行えなくなりました。そのため、「気づきのトレーニング」をBody InteractTMというバーチャル・シミュレーションに置き換えて実施することとしました。これは、救急搬送された患者に特化した分岐型のシナリオがオンライン上で展開されるものです。適切な対応を選択すれば患者の状態は改善し、不適切な対応をすれば患者の状態が悪化していくため、学生たちは臨場感をもって取り組めたようです。対応やその優先順位の判断根拠などのディブリーフィングはZOOMで行い、臨床判断プロセスに基づいたレポートを学びの最終確認としました。
 その他、私は数年前より、他大学の教員や大学院生らとZOOMを用いて抄読会を行っています。Critical Thinking, Clinical Reasoning, and Clinical Judgement: A Practical Approach2)が終了し、現在はAdvanced Practice Nursing Roles: Core Concepts for Professional Development3)を抄読しています。本学の大学院生も参加していますが、東京、神戸、弘前、名古屋など様々な地域からの参加者がいますのでZOOMはとても便利です。このような活動をしていたからこそ、コロナ禍での遠隔授業にはそれほど困りませんでした。一方で、この数か月は新型コロナウイルス感染症の日々更新される情報に振り回されることもありました。大学院の専門看護師実習や研究活動はストップしているため、大学院生は落ち着かない日々を過ごしているのではないかという心配もあります。また、これまでの教育、研究活動が役に立ったという思いがあるのと同時に、平時の方法と同程度の学習成果を保証できているのかという不安があります。だからこそ、今年の講義や実習方法はこれからきちんと評価していかなければならないと思っています。
 日本は世界的にみても災害多発国です。記憶にあるだけでも阪神・淡路大震災、東日本大震災、私の大好きな故郷・熊本の熊本地震と、自然災害は後を絶ちません。しかし、私たちはその都度、乗り越えてきました。今回の新型コロナウイルス感染症もきっと乗り越えられます。この大変な状況の中で、私は希望と最悪を考え、どう行動すべきか、どのような方策がとれるかを毎日真剣に考えながら過ごしてきました。コロナの前と後では、社会情勢も教育の方法も変わってくるのかもしれませんが、私が学生たちに伝えたい看護は変わらないことを改めて実感しています。一刻も早くこの事態が終息することを願うとともに、このコロナ禍での経験と学びを今一度整理し、これからの教育の在り方を自分に問うてみようと思います。

  • 1)Tanner, C.A.: Thinking like a Nurse: a research-based model of clinical judgement in nursing. J Nurs Edu, 45(6): 204-211, 2006.
  • 2)Alfaro, L.R.: Critical Thinking, Clinical Reasoning, and Clinical Judgement: A Practical Approach, 6e, 2016.
  • 3)Kathryn, B.A.: Advanced Practice Nursing Roles: Core Concepts for Professional Development, 6e, 2018.

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