202103

インドネシア共和国でのシミュレーション教育研修(2016年、JICA短期専門家)
左から2番目の眼鏡をかけている方が苑田先生です

日本赤十字九州国際看護大学 クリティカルケア・災害看護領域
苑田 裕樹

1999年より日本大学医学部附属板橋病院救命救急センターで救急初療室、ICU、CCUに勤務。2018年、熊本大学大学院社会文化科学教育部教授システム学博士前期課程修了、2019年より現職。

バッジがほしくて始めた
シミュレーション教育との出会いといま。
-より臨床レベルの教育を求めて-

 私がシミュレーション教育に興味を抱いたのは、恥ずかしながら、バッジがきっかけでした。日本ではAHAのガイドライン2000が発表されてから、AHAのコースをはじめ、さまざまなシミュレーションコースが始まりました。コースを受講するとプロバイダーバッジがもらえ、さらにインストラクターになるとよりかっこいいバッジをもらうことができました。1つでも多くバッジをゲットしたいという外発的動機に心燃やされて努力を重ね、最終的には30個以上のバッジを獲得し、バッジマニアとしてステータスを感じていたのを思い出します。またその頃、救急救命センターで勤務していた私は、受け持ち患者の急変を発見できず悔しい経験をしました。己の身体観察スキルやアセスメント能力の無力さを痛感するとともに、医療の安全のためには、看護師はもっと現場を想定したトレーニングが必要だと考えるようになり、これがシミュレーション教育に対する内発的な動機となりました。その後、2008年頃より日本救急看護学会のJNTECコースを通じて、諸先輩から本格的にインストラクションのノウハウを学びました。2013年から数年間は日本救急看護学会や日本クリティカルケア学会で「患者急変対応」や「指導者育成」をテーマとしたシミュレーション教育のワークショップを諸先輩と一緒に開催させていただきました。また、「インドネシア共和国におけるシミュレーション教育の導入プロジェクト(JICA)」の短期専門家として、インドネシア大学などの教育施設を3度訪問させていただいたことは貴重な経験となりました。そして、もっと理論的に教育できるようになりたいと考えID(インストラクショナル・デザイン)を学びました。現在は、教育手段の1つであるシミュレーション教育の効果を発揮できるよう、効果・効率・魅力性の高い授業の設計ができることを目標として日々努めています。
 現在、クリティカルケア・災害看護領域の科目を担当していますが、2020年度はコロナ禍の影響を受け、本学でもスピード感をもってオンライン教育を導入してきました。本学にはMoodleのようなLMS(学習管理システム:Learning Management System)は導入されていませんでしたので、Office365のアプリを組み合わせた本学なりの学習支援システムを構築しました。クリティカルケア実習もすべての過程を学内実習に切り替えることとなりましたので、“できるだけ臨床実習に近い学びを”を目標として、現状で使用可能なツールを活用し、IDモデルを参考にしながら学内実習を検討してきました。具体的には、仮想ICUと電子カルテの作成、シミュレーション教育、オンラインを活用した学習支援、臨床指導者との遠隔カンファレンス、VR動画の活用など、より臨場感のある教材づくりに努めました。ただ、授業評価を分析すると、学内実習の方が効果的なこと、学内実習でも代用できること、やはり臨地実習でしか学べないこともわかってきました。コロナ禍であっても、学生には4年という時間しかありません。そのため、教育の質を保証するために、シミュレーション教育のFidelity(忠実性)レベルをあげていく、そして“See one, Simulate one, Do one, Reflect one, Teach one”のサイクルで学習を支援していくことが大切だと考えています。ICTを効果的に活用した学習支援と、VR(いずれはAR・MR)技術と連動した複合的なシミュレーション教育ができたらいいなと思う、今日このごろです。
 シミュレーション教育を通して、さまざまな諸先生、諸先輩と出会い、成長のチャンスをいただきました。「チャンスはオプションにあり」、「チャンスは目の前にあり」。積極的に学びにいく姿勢、そして欲をだしすぎず、謙虚に前向きに、そして、より臨床レベルの教育を目指して、これからも研鑽していきたいと思います。

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