202202

名古屋市立大学大学院看護学研究科
遠藤 晋作

名古屋市立大学看護学部卒業後、名古屋市立大学病院小児内科病棟にて勤務。藤田保健衛生大学医療科学部看護学科、椙山女学園大学看護学部での教員経験を経て現職。名古屋市立大学大学院看護学研究科、博士後期課程修了(看護学博士)

小児看護の研究者、教育者として考え続けること

 私は、主に先天性心疾患をもつ子どもに対する母親からの病気説明のあり方、あるいはその中で子どもがどのように病気概念を形成していくのかについての研究を行っています。また、教育の中では成育保健看護学(小児看護学)の科目を担当し、学部学生の講義・演習・実習と共に、大学院学生への研究教育のお手伝いも一部させて頂いております。

 仕事を行う上で、大学という研究機関に所属しておりますので、まずは研究者であることを大切にしています。「看護は実践の科学である」、これは耳にする機会も多く、看護に携わる上で大切な考え方です。しかし私自身、豊富な臨床経験を有するタイプの研究者ではないため、実践を含めた現場に直結する研究を次々に生み出していくことには長けていません。自分にはなにができるのか過去に思い悩んだこともありましたが、今は一定の考え方を持てるようになりました。それは臨床の研究的視点を補い、協働していくことです。看護基礎教育の大学化が進められる現代、研究的視点をもって活躍する臨床現場の看護師が増え、看護の専門性を活かしたより良い看護が実践されるようになってきました。高度実践看護師の活動においても研究的視点は求められます。そこで臨床現場における研究活動に一緒に携わり、臨床現場で活きる概念構成する研究を行うこと、これこそが私なりの「看護の実践」ではないかと着想し、現在は社会学的な研究アプローチ等を学びながら、研究活動を続けています。
 一方で教育も教員として大切です。現在は学部生への看護教育が主な役割ですが、今後は大学院教育への関与も増やしていきたいと考えています。専門職教育である看護教育は、「仲間を育てられること」が面白さの一つであり、領域や方向性の違いこそあれ、同じ看護の仲間を育てることができます。教員対学生という関係も、年月が経てば対等な職業人となり、逆に教えられることすら増えます。その中で、お互いの立場の違いを活かした協働を実現させていきたいと考えています。学部教育から繋がった大学院教育はその一つの形であり、それが実践できる職場に今現在いられることに大きなやりがいを感じています。そのためにも学生から、教育内容だけでなく立ち振る舞いやコミュニケーションから「将来一緒に働きたい」と思ってもらえる教員であることは、常に意識しなければならないと思っています。

 そしてこれら全てに共通して大切にしているのは「考え続けること」です。医療、人口構造、看護教育、私の専門領域でも子ども観や移行期医療の在り方など、時代と共に様々な変化があります。あるいは現在の新型コロナウイルス感染症流行など、予期しない社会全体を巻き込んだ変化も起こります。看護の研究者、教育者として、どのような役割を果たさなければならないのか、社会からどのような役割が求められるのか、これらを見失っては上記のような活動は実践できませんし、その時々の対応を見誤ることにもなりかねません。これらを踏まえ、常に「考え続けること」を大切にしています。

 私自身、まだまだ未熟な身であり、諸先輩方や同僚、学生、あるいは臨床現場で出会ってきた子どもたちの支えがあって現在の自分があります。しかし未熟だからこそ、これから自分に何ができるのかを考え、可能性を広げていけるように、今後も努力し、活動していきたいと思います。それが私なりの小児看護、教育への貢献に繋がっていくと信じています。

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