202506

山形大学大学院医学系研究科看護学専攻 臨床看護学講座(成人慢性期)助教
西村 結花

山形大学医学部看護学科を卒業後、山形済生病院整形外科病棟で看護師として勤務しながら同大学大学院医学系研究科看護学専攻修士課程を修了。2020年より山形大学医学部看護学科に助教として着任し、同年10月より大学院博士後期課程に在学中。現在、母校で教育に携わりながら、運動器看護に関する研究に取り組んでいる。

看護に、まっすぐに。

【看護の原点——「人の力になりたい」という思い】
私が看護の道を志したきっかけは、祖父母や地域の高齢者とのふれあいにありました。幼い頃から身近な人々に温かく見守られて育った経験は、私の中に「人の役に立ちたい」という気持ちを自然と芽生えさせました。高校2年生の進路相談で担任の先生から看護師という職業を紹介され、その時初めて、看護が単なる医療技術の提供ではなく、人と人との関係性の中で深く信頼を築いていく営みであることを知りました。自分の思いと重なり合うその職業に強く惹かれ、看護師になることを決意しました。

【働きながら学び 看護の本質に向き合う】
大学卒業後は臨床での実践を続けながら、より深く看護を探究したいという思いから大学院に進学しました。働きながらの学びは簡単ではありませんでしたが、現場で感じた違和感や疑問を持ち帰り、それを理論的に捉え直すことで、自分の看護観が少しずつ言葉になっていく感覚を得ました。日々の業務に追われる中でも、患者さんとの関わりを丁寧に振り返ることが、次の実践につながる循環を生み出しました。この経験は、今でも教育や研究に取り組む上での基盤となっています。

【教育と研究で築く看護の未来】
現在は大学で成人慢性期看護学を担当しながら、変形性股関節症の患者さんを対象としたセルフマネジメント支援の研究を行っています。この疾患は進行性で、痛みや身体機能の制限が患者さんの生活の質に大きな影響を与えます。私は、患者さん自身が主体的に健康を維持する力を支援する方法を探究しており、その知見を学生指導にも活かしています。
教育の場では、学生が知識を暗記するだけでなく「この知識が患者さんにどう活かされるのか」をイメージできるよう、事例や対話を大切にしています。また、実習では慢性疾患とともに生きる患者さんの「強み」や「その人らしさ」に目を向け、どのような看護ができるかを学生と共に考えることを重視しています。看護とは、正解のない問いに向き合い続ける営みです。そのプロセスに寄り添うことが、教育者としての役割だと感じています。

【誠実であること——私の看護観の軸】
私が最も大切にしている価値観はインテグリティつまり「誠実さ」です。これは、祖母の生き方を通して学んだものであり、どのような相手にも誠実に向き合うという姿勢は、看護にも教育にも研究にも共通する重要な態度だと考えています。教育では、学生一人ひとりの声に耳を傾けること、研究では対象者に対する倫理的配慮と責任あるデータの扱いを意識すること、そして日々の生活の中でも誠実であり続けること——これらは、私のすべての活動に通じる信条です。

【看護を目指す皆さんへ】
看護は、身体のケアだけでなく、心や社会とのつながりも含めた総合的な支援が求められる仕事です。そのためには、知識や技術だけでなく、人間そのものを理解しようとする姿勢が不可欠です。時には困難や葛藤を感じることもありますが、それを乗り越えるたびに、看護師としても人としても成長することができます。
これから看護を学ぶ皆さんには、自分の「なぜ看護師になりたいのか」という原点を大切にしながら、一歩一歩力を積み上げていってほしいと思います。看護は学びの終わらない世界です。皆さんの中にある可能性を信じて、ぜひ多様なフィールドに羽ばたいてください。私自身もこれからも、教育と研究を通して、看護の魅力と可能性を社会に伝えていきたいと考えています。

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