202610

東邦大学健康科学部看護学科
島村 敦子

慶應義塾大学病院内科系病棟で勤務したのち、千葉大学看護学部3年次編入学。卒業後、訪問看護ステーション等で勤務し、2018年に千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程修了、博士(看護学)。看護系大学の教員としては、千葉大学大学院看護学研究科(訪問看護学教育研究分野)助教として教育活動に携わり始め、2018年4月に東邦大学健康科学部講師として着任、現在に至る。

暮らしの場へ入り込む看護の専門性
—「空気を読む」訪問看護の魅力

 私の専門は「訪問看護/在宅ケア」など、地域やご自宅で生活する人たちへの看護です。病院というある程度、同じように整えられた環境やルールがある場所ではなく、療養者さんとご家族が日常生活を営む「自宅/家」に入り込んで看護やケアを行う、とても魅的な分野だと思っています。

 私が訪問看護師を目指したきっかけは、看護学生時代の実習にあります。当時はまだ「在宅看護論」という正式な科目はなく、地域看護学での実習でした。実習では、病院から行う訪問看護サービスのひとつとして、看護師さんに同行し、利用者さんのご自宅へ伺いました。利用者さんのご自宅で行ったことは、いつもいる場所で快適に過ごせるように環境を整えることでした。その時は、そのことがなぜかとても印象に残り、訪問看護はとても楽しい、私も訪問看護師になりたい、と思うようになりました。
 卒業後は、大学病院の内科系病棟で働き始めました。そこでは慢性疾患を抱え、入退院を繰り返す患者さんに多く出会いました。入院中に、退院指導を行い、外来での看護につなげることなどに取り組みました。しかし、しばらくするとまた入院して戻ってこられる方が多く、「ご自宅に戻られた後、一体どんな生活を送っているのだろう?」、と考えるようになり、看護学生のときに感じた「そうだ、訪問看護師になりたかったのだ」という気持ちを思い出しました。
 ちょうど介護保険制度がスタートした時期でもあり、「地域や在宅での看護を学んでみたい」と思い、千葉大学看護学部の「訪問看護学教育研究分野」という文字に惹かれ、3年次編入学を決意しました。

 その後、ご縁が重なり、教員の道へ進むことになりました。現在の私の研究テーマは、訪問看護師が有する「空気を読む能力」から、訪問看護師の専門性を明らかにすることです。「空気を読む」と表現していますが、看護の基本である「対象者を観察」することだといえると思います。
 訪問看護は、療養者さんの暮らしの場に入り込み、その日その場の状況、療養者さんやご家族の思いを瞬時に察して看護を行います。このことは、訪問看護を経験した看護師だからこそわかる感覚であり、「観察」という言葉を越えて行われる訪問看護師特有の能力ではないかと考えています。この感覚は言葉で説明することが難しいため、「目の動き(視線)」にも着目し研究に取り組んでいますが、なかなか思い通りにはいかず、つまずきながらも、少しずつ研究を続けています。

 また、大学の授業でも研究の成果を取り入れ、看護を学ぶ学生さんたちに、訪問看護のリアルな感覚を伝えることを目指し、授業方法を検討しています。大学内の畳がある演習室は、実際の一人暮らし高齢女性の日常生活の再現を目指し、整備しました。そして、その演習室を用いた模擬訪問を行っています。また、模擬訪問は、実際には少人数しか行うことができません。この点を克服するために、演習室での模擬訪問の様子について、遠隔システムを用いてリアルタイムで講義室とつなぐ方法にもチャレンジしています。音声が聞こえない、画像がフリーズするなど機材のトラブルも経験していますが、それでも学生さんから「新しいことにチャレンジしようとする努力は認める」「リアルな体験ができた」などの感想や励まし、一緒に授業を考えてくださる先生方に支えられ、授業方法の検討にも取り組んでいます。

 生活の場に訪問し行う看護は、本当に魅力的です。これからも、一人でも多くの方に訪問看護の魅力、専門性を伝えていきたいと思っています。

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