2020/03/17
JANPU災害支援対策委員会は、被災後の大学の教育継続に向けたネットワークづくりについて、被災校の体験、看護系大学のネットワークを活用した被災県の取り組み、ネットワークづくりや大学の備えなどから学ぶことを目的とし、『災害フォーラム~災害時の教育継続支援に向けたネットワークづくりに向けて~』を開催しました(2019年11月24日、本会場:兵庫県立大学明石キャンパス地域ケア開発研究所、WEB会場:日本赤十字看護大学広尾キャンパス)。災害フォーラムでは、第1部として3名の先生からご講演いただき、その後第2部として、被災後の大学の教育継続のためのネットワークづくりに関してグループワークを行いました。今回は、第1部の災害時の教育継続支援のためのネットワークづくりに関する話題提供の内容についてご紹介します。
■資料1:平成30年7月豪雨災害時の本学の取り組み―県内看護系大学のネットワークを活用した取り組み―
https://www.janpu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/nishinihongouusaigai.pdf
■資料2:兵庫県立大学における災害発生時の学生の安否確認
https://www.janpu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/saigai-gakuseianpikakunin.pdf
■資料3:愛知県内大学間におけるネットワーク構築の経緯
https://www.janpu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/03/aichiken-network.pdf
1.平成30年7月豪雨災害時の本学の取り組み―県内看護系大学のネットワークを活用して―
渡邊智恵氏(日本赤十字広島看護大学 教授) 資料1参照
【スライド1枚目】
「スライドの表紙に使用している冊子は、広島市が去年の平成30年7月豪雨災害の取り組みをまとめたものであり、災害の概要や、災害対策本部がどのような活動をしたのか、救助、捜索、被災者の支援に向けた取り組みが、詳細にわたって記載されています。ホームページからもダウンロードできますので、ぜひ関心のある方は読んでいただけたらと思います。広島の支援活動にたくさんの方においでいただきました。その感謝の思いと教訓をつないでいきたいということでまとめたものです。 今回、本学の大学としての取り組みと広島県の看護系大学のネットワークを活用した取り組みについて主にお伝えします。」
【スライド2枚目】
「平成30年7月の豪雨災害では、全国で多大な被害があり、広島は一番人的な被害も多く、広島、岡山、愛媛という中四国に大きな人的な被害がありました。 広島は7月6日の昼過ぎから7月7日の朝にかけて継続的な雨が降り、7月6日の19時40分に大雨特別警報が出され、アラームが鳴り続ける状況でした。これは線状降雨帯が影響しており、その状況の中で広島県内は非常に広範な被害がありました。広島市、政令指定都市のほぼ全区にわたっての被害と東広島市、呉市、三原市、尾道市、福山市等々を含めて大きな被害が出ました。交通網も、高速道路は土砂崩れで使えず、JRも山陽本線、呉線、芸備線が使えず、芸備線は先月(2019年10月)全線開通するといった被害でした。」
【スライド3枚目 】
「スライドの赤い点が県内の看護系の大学をプロットしたものです。広島市、呉市、三原市、福山市、に看護系の大学が8つあります。廿日市市にあるのが本学です。唯一被害が少ない地域に存在していた大学だと思っていただいたらと思います。」
【スライド4枚目】
「ただ、本学には、広島県内の出身者が6割おり、広島市内の安芸区、安佐北区・安佐南区、東広島市、呉市、三原市等からの通学者が少なからずいました。そういう意味では、学生の安全をどう確保するかが非常に大事でしたし、教職員については、翌日の土曜日、日曜日で日本赤十字看護学会を本学で開催する予定で、開催の有無について判断を迫られていたというのが去年の状況になります。結局、学会は特別警報の発令により、中止の判断をしております。」
【スライド5枚目】
「本学の被害状況ですが、学生本人、家族の被害については、家族が被災をしたが1名、自宅または実家の被災が5軒ありました。教職員に関しては、被害はありませんでした。」
【スライド6枚目】
「本学の対応としては、学会を7月7日・8日で予定していたため、教職員のほぼ全員が大学にいました。大学で開催する予定でしたので、中止の決定があった場合にはすぐに全国の参加予定の皆さんにお知らせしないといけないということもあり、帰れなかった教職員もいたと思います。そんな中で、学生の安否確認を行いました。臨時の幹部会が日曜日に開かれて、当面、月曜日どうするか話し合いをして、月曜日に関しては休講を決定して、非常勤の先生も含めて通知を日曜日にしています。月曜日、教員は大学に行き、私は総合看護実習中でしたので、実習場に行きました。学生の顔を見て『ああ、ほっとした』という状況でした。月曜日もまだ連絡がとれていない学生たちの安否確認が継続して行われて、被害が大きかった地域から通学をしてくる学生たちが、とても通学できない状況でしたので、一時的な本学宿泊許可決定や、公欠にするということの決定をしました。授業に関しては、10日再開の通知をしています。しかし、通学できない学生をどうするのかが懸案事項で残り、10日の3時間目からDVDの収録を決定して、必修科目だけでしたが収録をして、通学できない学生は後からでもいいので見てもらうということを決定していきました。11日には臨時の教授会等を開き、本学の被害は少なく、被災をしている学生もあまりいないため、通常に早く戻すことも学生のメンタルを回復させるためには良いため、通常に戻すことを決定して、その後のフォローをしていくこととなりました。ただ個別で、通学困難な学生に対しては配慮を忘れないことの共通理解はしました。大学としての姿勢をきちんと公開することも大事なので、教授会後に学長からのメッセージとして全学生、保護者の方に向けてこれらの情報を流しました。参考の部分の記載は、県内の小中高の状況です。高校に関しては全校が9日は休校し、小中に関しては約6割が休校しています。」
【スライド7枚目】
「通学困難な学生への支援ですが、まず宿泊場所に関する支援として、大学内のリソースをできるだけ活用し、普段お茶室として使用している和室を、クラブ活動が終わった後にシャワー室も含め利用可としました。通常30分程度で通学する学生が2~3時間かかっていたため、9時始まりの授業に間に合わないという状況もあり、火曜日からの授業開始後は大学で過ごし、金曜日に自宅に帰るという対応をとりました。学生が2名と認定の研修生が1名、計3名が利用していますが、1日1,000円のリネン代だけを徴収しました。また、本学には遠方から来ている学生専用のマンションが2棟あります。その2棟のうちの1棟で1室空室がたまたまあり、そこを通学が困難な学生に利用してもらいました。これは無料で開放してもらうように住宅供給公社に申し入れをして、呉市からの学生が1名、11月まで利用しました。実習期間中でしたので、実習施設に行けない学生に対してもホテル宿泊を可とし、これには助成金の支援を行い、3人の学生が利用しています。」
【スライド8枚目】
「もう1つの通学困難な学生に対する支援は、自宅から出られない、あるいは避難場所にいる学生のために、講義の録画をすることにしました。来たくても来られない状況があるので公欠となりますが、できるだけ通常に近い、日常に近い状況を学生に提供するということが非常に大事になるため、学習機会を保障するための措置として、講義を録画し、学内ポータルでの閲覧を可能にしました。これは必修科目だけで、非常勤の先生方にも協力をしていただきました。教員は通常の講義をし、事務局スタッフが毎回録画を行いました。利用した学生は20名です。7月は評価期間に入る直前の時期であり、試験の形態を変えるのか、公欠の学生も同じ試験でいいのかという議論もありましたが、試験については通常通りとしました。」
【スライド9枚目】
「経済的な支援については、学園本部の奨学金制度の運用が適用されたケースもありました。自宅の被災に関しては、在学生の現年災害も対象になり、2名の学生が申請して承認を受けています。学生には『このような経済的な対応、支援は非常に良かった。安心できた。』ということを言われましたし、授業も学内ポータルで閲覧可能にしたので、試験を通常通り行ったことに対して不満を言う学生はいませんでした。7月6日の大雨特別警報が出た日の対応については、休講の連絡が遅かったこともあり、『その時間に休講にされても帰宅できないため、もう少し早く決断し、周知をしてほしかった』という意見もありました。また、『看護学生として、何か災害が発生したときに活動したいが、ボランティア活動を大学としては行わないのか』という話も学生からありました。しかし、試験もあったため、学生に対してボランティア活動への支援ができなかったことは反省点です。」
【スライド10枚目】
「広島県看護系大学協議会としての活動について紹介します。7月13日に日本災害看護学会の先遣隊として広島市の避難所を、熊本赤十字病院の災害看護CNS(専門看護師)の方と私の2人で回りました。渋滞がひどく、安芸区の矢野町等を中心に回ることしかできませんでしたが、保健師の方々と話をしたときに、名刺をお渡しして、学会としてもサポートしていきたいという話をしました。その後17日に私のところに電話があり、ボランティアセンターで看護支援をしてもらいたいという要請がありました。学会としてではなく、地元の大学として何かできないかということを私自身は考えて、学長のところにすぐ相談をしました。学長からは、1つの大学でやるのは無理なので、県内には8看護系大学をつなぐ仕組みを活用し、そこで声をかけ、活動ができないかという話し合いが私と学長との間でなされていきました。」
【スライド11枚目】
「広島県の看護系大学協議会は、2017年、災害が起こる前の年に第1回の会議が開かれました。これは8大学全部が参加して、もともとは広島県内の大学における看護学教育の情報交換会ということで始めました。2018年に会則を決めて、情報交換会では、公に物を言うときに何も訴える力がないということで、広島県看護系大学協議会という名称とし、県内の看護教育の質の向上に寄与するということを目的としています。」
【スライド12枚目】
「学長がこの時会長であったことは運がよかったと思います。協議会を通じて、各大学の被害の状況を確認し、災害の対応について各大学が被災後にどのような活動をしたのか情報共有していきました。ボランティアセンターの支援活動は私が窓口を担当することとし、学長から呼びかけをしてもらったところ、5大学と連携をすることができました。参加できない大学としては『被災地の中で被害が大きく自施設の対応を余儀なくされている。既に被災地内で活動を展開しているため残念ながら参加はできない』など、当然だと思う理由でした。」
【スライド13枚目】
「ボランティアセンターでの支援活動は、被災地域にボランティア活動する方々が多く入ってこられ、土砂をかき出したり、家の中の清掃を行っており、ボランティアがけがをしたり、病気に罹患すると復興に遅れが出るため、ボランティア活動の継続ができることを通して被災者の命と暮らしを守り、被災地域の復旧・復興に貢献することを目的に掲げました。活動時間は朝の8時から15時まででしたが、気温が35度の日もあり、猛暑の場合には13時で活動終了となりました。事前の受付から活動中、活動後の心身の体調管理、環境調整を行い、主には、熱中症への対応、外傷の手当て、持病を持っている人への対応を行いました。」
【スライド14枚目】
「実際の支援活動は、安芸区の中野、畑賀、瀬野、矢野の地域で行いました。」
【スライド15枚目】
「広島市の死者数は23名で、そのうち安芸区は18名と一番多く、行方不明者も2名で被害が甚大で、作業依頼件数も他の地域の10倍であり、ボランティアの活動者数も一番多いという地域でした。」
【スライド16枚目】
「現実の課題を一緒に考えて解決に導く、課題をつなげる、自分の体調管理をすることに気をつけて活動することを、参加してくださる先生方には説明しました。」
【スライド17枚目】
「この支援活動への本学の対応ですが、赤十字の理念である人道の活動であり、人々の苦痛を軽減し、命と健康を守るという活動、人間の尊厳を尊重するという活動は、その人道に則るということで、公務として認定していただきました。この頃、授業も実習もあり、土日に活動した教員は、公務であるため振替休日をとることができました。ただ、すごく後になってからしか取れませんでした。公務であるために、13時で活動が終わると、大学に帰り、汗だくのままで大学の業務につくということもありました。大学からは公務ということもあり、全面的にサポートしていただき、血圧計や体温計、消毒液などの必要物品を貸し出ししていただきました。何より、公務ということで非常に安心感を持って教職員は活動ができたと思います。ただ、他大学の先生方は有休を使って来ていました。ボランティア活動なので、保険に入るため、けがをした際の対応は万全ですが、待遇面では同じ活動の中でも公務と有休という差があるため、あまり外では『私たち、公務です』ということは言えませんでした。」
【スライド18枚目】
「実際の活動状況は、真夏日が続く中で、活動時間の短縮や15分ルールの原則を守ってやっていきました。バディーを組んで活動し、2人で相談して巡回しました。」
【スライド19枚目】
「ボランティア支援活動の成果としては、熱中症で救急搬送する人数が激減したとの評価をいただきました。支援前は救急搬送することが多くありましたが、看護職が支援に入ったことで、搬送が必要なのかどうか判断ができるため、不要な救急搬送がなくなりました。外傷、虫刺され、蜂刺されなどの適切な対応をしてもらい安心したとの評価もあり、看護職は不可欠であると感じました。」
【スライド20枚目】
「県内の看護系大学協議会があったおかげで、この活動は展開ができたと思います。しかし、被災地の中にある大学であり、活動できない大学があることも当然と思いますので、8大学全部が参加しないといけないわけではなく、緩目のつながり、許容し合うというようなことは必要かと思います。このつながりによって活動できる大学が協力し合うことで、被災地の復興に貢献できて、ひいては看護の力を広く周知するということにもつながると思いました。今後の課題としては、連携のレベルの検討が必要になると思っています。今回、県内の大学がつながりこの活動ができましたが、これだけ広域な災害が起こると、近隣、ブロックという地域の拡大が必要と思います。岡山でも大変な状況があったため、近隣であっても岡山と手をつなぐことは望めないといった状況もあるため、緩やかな近隣の関連大学とつながることが大事であると思いました。また、学生からの『もっと私たちを活用してほしい』という思いを酌み取れなかったところが反省になっており、学生たちの活用についても今後の課題と考えています。」
【質疑応答】
学生ボランティアの派遣準備について検討の必要性があること、行政とのネットワークの必要性、教員ボランティアについても無理強いしない姿勢で声をかけ続けること、が話し合われました。また、ビデオを使った教育はもともと授業の事前課題等で使用していたため慣れており、問題がなかったことや安否確認は一斉メールと学生同士のネットワークも活用し2日間要したことが確認されました。
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2.兵庫県立大学における災害発生時の学生の安否確認
増野園惠氏(兵庫県立大学地域ケア開発研究所 教授、災害支援対策委員会委員) 資料2参照
【スライド2枚目】
「兵庫県立大学は兵庫県下全体にキャンパスが点在しております。8学部、14大学院、4附属研究所、1附属高等学校という状況になります。」
【スライド3枚目】
「学生がいるキャンパスだけでも9キャンパス、全県下にキャンパスが点在しているため、キャンパスごとに状況が非常に異なります。例えば風水害、台風や大雨といった状況でも、最近は非常に限局的なものもあります。特に南側の瀬戸内海ライン、阪神地区は台風がくると南からの風や雨の影響で、通学にも使われる鉄道が止まり、学生は休講になるという状況ですが、かたや北は全く気象状況が違います。北のほうは逆に冬場、雪が多く降ったりということもあり、全学全体、大学全体で何か対応するというのは非常に難しい状況があります。このようなことから、学生の安否確認にかかわらず、災害対応に係る運用というのは、キャンパスごとに事情が違っており、キャンパスごとに実施をするというのが今までのところでした。ですが、昨今の水害、夏場の台風、あるいは豪雨災害、さらに今後これから起こりうる東海・東南海地震のようなことを考えますと、大学全体の話も出てきますし、やはり大学、キャンパスごとに対応が違うというのもどうだろうかということで、近年、大学としてどういった対応をとるかという話が進んできました。特に学生の安否確認ということに関しますと、方針や具体的な手段を考えていかなければならない状況となります。幸いなことに、今までのところ、大学全体で安否確認が必要となった事態は発生していません。最近のことを考えてみますと、一昨年、昨年も台風がありました。台風20号、21号が発生し、兵庫県内でも幾つか被害がありました。また、大阪北部地震もありましたが、大学全体あるいは、いずれかのキャンパスが被害に遭うような規模の災害は起こっておりません。ですので、今の状況というのは次の災害に備えての安否確認の対応の準備という話です。」
【スライド4枚目】
「今の体制の話の前に、看護学部ではこれまでどうしていたかということをお話しします。以前から看護学部では、担任制度をとっております。1人の教員が大体15名から20名程度の学生を担当します。これまでの推移で、いろいろな学年にまたがって担任を持っていることもありましたし、学年ごとで分けていることもありましたが、いずれにしても教員1人で15名から20名程度の学生を担当するという制度です。進学や履修の相談だとか、生活の相談ということを含めて担任という形でやっています。災害が発生するという状況になると、この担任の教員が大学からの安否確認の要請を受けて、学生に個別に連絡をし、そして安否情報をとりまとめ、大学に報告するというのが以前のやり方でした。それぞれの担任が学生の連絡先を把握しておいて、何かが起こると「先生、連絡をしてください」というメールあるいは電話があり、電話やメールで学生に連絡をとるというやり方をしていました。数年前からは、安否確認が必要な状況が発生すると大学から学生に一斉メールを送り、学生は自分の担任教員にメールもしくは電話で返信するということを始めました。このような形で教員は自分の担当学生の情報をとりまとめ、学年担当の教員に報告するという仕組みでした。シラバス等々もネット上で確認するような時代になり、学生が大学にメールアドレスを登録するという状況が発生してきましたので、大学から学生に一斉メールを送ることができるようになりました。しかし、考えてみていただいたらわかりますように、いろいろ問題がございます。最初のころは、確認にかなり時間がかかりました。20名ぐらいの学生に、一斉メールを送ることもありますが、昔は個別に電話をしたこともありました。それから、教員は担当学生の連絡先を常に携帯しておかなければならないということもあります。教員が海外出張、その他で日本国内にいない場合など、誰がいない教員の分を担当するのかという問題も出てきます。学年担任の教員が担当することもありましたが、そうなった場合に、大学側は教員一人ひとりの動向の把握が必要となります。出張の場合は把握しておりますけど、休みの場合はどうするのかということもあり、教員を介して安否を確認するということはいろいろと問題がございました。 教員から連絡をする方法でなくても、やはり同じです。送り先を一斉メールにしてもらっただけなので、出張していると対応に困るということや、相変わらず学生全員の連絡先を常に持っておかなければならないという状況がありました。」
【スライド5枚目】
「そこで、一昨年頃から体制をもう一度見直しました。今度は大学から学生に一斉メールをして、日ごろ学生の休講案内やシラバス等で使用している教育管理システムに、学生がログインをして、安否情報を入力するという仕組みに変わりました。ですので、学生からの連絡は直接担任に来るわけではありません。結果は学務課でとりまとめをして、連絡がつかない学生もおりますので、そうなった場合には事務もしくは担任の教員からは連絡をするということになりました。 これがその模式図です。何かが起こったときには、大学全体にかかわることであれば大学本部で決定して、全学、大学内の全学生に一斉メールということもありますが、キャンパスによって状況が違うので、それぞれのキャンパスの状況で学生の安否確認が必要だという状況であれば、キャンパスが大学本部と協議をして、この安否確認の仕組みを動かすのかどうかを決定し、実施となります。学生の安否確認をする場合には、教育管理システムを使って学生に一斉メールを送信し、そしてメールを受け取った学生はシステムにログインして状況を報告します。『元気です』『元気ではありません』だけではなくて、被害の状況や幾つか質問項目も入れられますので、質問項目に対する回答を入力し返信してもらいます。そうすると、今度はこのシステムの中に情報が全部たまっていきますので、その結果を各キャンパスもしくは大学本部のほうでダウンロードして状況を確認します。もちろん全員が回答しないこともありますので、各キャンパスの教職員が所属の学生に連絡するという仕組みを今現在つくり上げているというところです。これまでのところ、数回、この仕組みが動くかどうかということでテストをしております。本番で使ったことはまだございません。テストの状況でいきますと、一斉メールを受け取るためのメールアドレスを登録していない学生が少なからずいます。教育管理システム自体は、入学すればIDとパスワードは付与されますのでメールアドレスを登録していなくても使えますが、この一斉メールを受け取るためにはメールアドレスの登録が必要です。看護学部はほぼ100%メールアドレスを登録していますが、ほかの学部では登録数自体が大体5、6割というところもあります。メールアドレスを登録していないと、一斉メールが届きませんので、それに対する回答もされず、安否が確認できないという状況になります。安否確認テストの回答率は、登録者の7割ぐらいの状況です。ですので、まだまだ完璧な状況ではございません。もちろんこれは通信が確保されているというのが大前提ではありますし、大学のサーバーも動いているということが大前提であるので、なかなかこれだけでは、実際の状況の中では難しいと思います。皆さんの大学でもいろいろな、もっと良いシステムを使っておられると思います。ですが実際、安否確認システムも使いますが、個別の学生、自分の担当の学生には教員も含めたグループLINEなどのSNS等でお互いの状況を報告し合って確認するというのが一番早く確実になっている状況ではあります。ただ、担任の教員だけに依拠しているような仕組みですと、その方が不在あるいは被災するという状況ももちろんありますので、大学としてこのような仕組みをとっています。」
【質疑応答】
サーバーのセキュリティー確保について、訓練時の学生の回答率の確保について情報交換がされました。学生の回答率については、何度も行うこと、声掛けしていくことの必要性が話されました。
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3.愛知県内大学間におけるネットワーク構築の経緯
船橋香緒里氏(修文大学看護学部 教授、災害支援対策委員会委員) 資料3参照
【スライド2枚目】
「愛知県では、現在15大学あります。昭和47年に1つめの大学ができ、平成の前半ぐらいまでは1桁ですが、16年以降から増え、現在は15校です。」
【スライド3枚目】
「愛知県では長年保健師養成において、1つの大学と、県立の保健師養成施設の2つでしたが、その後いくつか増え、県主導の保健師の実習調整会議が開催されるようになりました。そのときに大学間の情報交換をしていきました。その間に、平成12年に東海豪雨があり、これは災害救助法の適用を受けた災害でした。このときに、一部の大学の看護学生がボランティアに参加しております。平成15年に愛知県内でいろいろ話し合う場が欲しいということと、カリキュラムや実習費等の情報交換をしようということで、平成16年度に愛知看護系大学連絡協議会を発足しています。この協議会は日本看護系大学協議会の加盟には関係ない組織として設立しております。よって、参加校の中には、JANPUに加盟していない大学も入っております。平成18年に中部大学で災害フォーラムを開催し、学生ボランティアの活動の紹介や、各大学間の連絡について検討する会を開催しております。そのときに、同時に加盟校が協力して支援できる学生の災害時活動の基本指針を作成しています。」
【スライド4枚目】
「愛知県内の主な災害ですが、地震は第二次世界大戦以前ばかりで、濃尾地震が明治24年にあり、これが非常に大きい地震でした。それから、東南海地震が昭和19年にあり、その翌年に三河地震がありました。水害は、多くの方がご存じだと思いますが、昭和34年に伊勢湾台風がありました。それから、昭和51年に台風17号があり、このときは長良川が決壊し、愛知県よりも岐阜県が非常に被災されたかと思います。その年は17、18、19号と立て続けに台風が日本を襲い、豪雨災害が起きています。東海豪雨は、平成12年にあり、庄内川、天白川が決壊しております。濃尾地震は既に100年を越し、伊勢湾台風は既に60年を越しています。その後の東海豪雨は、都市型災害の1つとしてその後の整備という点で多くの大都市で参考にされたという話をお聞きしています。」
【スライド5枚目】
「愛知県の看護系大学連絡協議会は、規約の抜粋にありますように、目的は大学における自立性を尊重しながら学術と教育に関する事項の協議を通して看護学教育の推進・向上に貢献することです。構成する教員ですが、あくまでも看護学を専攻している教員ということで、例えば、基礎科目とか基礎医学という先生ではなくて、看護学という教員を出すことになっております。愛知県に所属する大学から構成されており、現在、年2回定例会議を開いております。会長が所属する大学が当番となりまして、各大学から代表2名、会場は持ち回り、輪番制、2年交代で、副会長は次回、当番校であるところが副会長をするということになっています。」
【スライド6枚目】
「愛知看護系大学連絡協議会が支援する学生の災害時活動についての基本指針というのを抜粋させていただきました。自然災害における看護学生を中心とするボランティアサポートということです。学生がかかわるのは中長期的支援の活動を期待するということで、学生の安全は各大学で責任を持つ。それから、学生には、ボランティア養成講座、救急法、市民講座などを受けるように促しております。各大学のボランティアサークルなどを活用することになっております。」
【スライド7枚目】
「愛知県内看護系大学の災害発生時における協力体制フローチャートの表は、日本看護系大学協議会『防災マニュアルの指針2017』に載っております。」
【スライド8枚目】
「愛知県内で災害が発生した場合、観察し得る形をとれる事柄か、異常があるか、地震では震度6以上で、各会員校で安全の確保と確認をして、当番校へ報告するということになっております。当番校が主体的に情報収集をして、当番校は被災校に支援が必要かどうかをアセスメントすることになっています。必要がなければ、各会員校へ支援の必要はないという連絡をして、支援が必要になった場合は、当番校が何をサポートしなければいけないかを話し合うことになっています。万が一、当番校が被災した場合は、副当番校がその代行を行うということが決まっています。ただし、あくまでもこれは小規模なことを想定されておりまして、おそらく東日本大震災級の自然災害ですと、これでは間に合わないと認識しております。平常時の連絡体制についてご説明させていただきます。毎年、年度初め頃の1回目の会議の際に確認をし、フローチャートを作成します。愛知県の1つの特徴は、このフローチャートをつくるときに、行政側にも入っていただいているところです。愛知県健康福祉部健康担当局が保健師を所管するところになっています。ここでは、名古屋市を除く中核市及びそれ以外の市町村の保健師の掌握ができるところになっています。愛知県健康福祉部医療福祉計画課は、看護の担当と災害時の拠点病院の連絡体制等を所管している部署になりますので、ここからの情報も得やすいのではないかということで、こちらにも連絡網をとっています。途中から入っていただくことになりましたのが名古屋市です。名古屋市は政令指定都市のために、なかなか情報が難しかったのですが、名古屋市健康福祉局との連携もとることになっております。さて、どうしたら県外、県内の連絡が構築できるかということですが、愛知県の場合は、幸いに行政主導の実習に関する調整会議があったということです。看護系大学の多い県では、こういった会議を持っていると思います。例えば、福岡や兵庫神奈川はこのような実習調整会議を持っていますので、そのような県では、比較的その時にネットワーク化の話がしやすいのではないかと思っております。まず、県内でのニーズ、あくまでもこれはニーズ調査になりますが、ニーズ調査が可能かどうかも大事かと思います。県内の同じ大学間でニーズ調査ができなければ、ブロックの委員が入っていくということになりますので、こういったところが県内のネットワークの必要性ではないか思っております。まとめになりますが、このような会議がない都道府県においては、まずは顔を合わせることが大事と思っております。愛知県でも、最初から災害の話をしていたわけではなく、実習の謝金に関して値段の大小があり、そういったところから入っていきましたので、どんな話題でもいいと思います。今ならちょうどカリキュラム改定の検討時期ですので、それに伴う話題でもいいですし、災害支援がその中に出てくればさらにいいのではないか思っております。」
【質疑応答】
フローチャートのアセスメント項目、支援の具体的な項目は、支援の必要性があるか判断する項目が必要であり、また、支援ができること、できないことのすり合わせができるとも必要であることが話し合われました。また、同じ県のみでなく、近隣の県にある大学との連携も必要であることについても話し合われました。
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アンケートへのご協力、ありがとうございました。
一般社団法人 日本看護系大学協議会
災害支援対策委員会 委員長 中野綾美